【「察して」が通じない?】外国人スタッフが増えるホテルで、変わるマネジメント-VOL.68

ホテルで働いていると、「言わなくても分かる」「周りを見て動く」といったことが、仕事の基本として語られることがあります。

「これくらいは分かるよね」
「状況を見て判断して」
「普通はこうするでしょう」

日本人同士で働いていると、こうした言葉が大きな問題にならないこともあります。
それは、言葉の裏側にある「前提」を、ある程度共有しているからかもしれません。
けれど、外国人スタッフと一緒に働く機会が増えているホテルでは、これまで無意識に共有されていた「日本の職場の常識」が、そのまま通じるとは限りません。
そして、これは外国人スタッフに限った話でもありません。
日本人同士でも、「察して」「普通はこうする」といったコミュニケーションが、すれ違いを生むことがあります。今回は、ホテルの現場で起こりやすい「察して」のコミュニケーションから、これからのマネジメントについて考えてみます。

「察して」は、日本人同士でも難しい

「お客様の様子を見て、必要なら声をかけてください」
ホテルでは、そんな指示が出されることがあります。
では、「必要」とはどのような状態でしょうか。

お客様が周囲を見回していたら声をかけるのか。
困った表情をしていたら声をかけるのか。
荷物を持っていたら手伝いを申し出るのか。

経験を積んだスタッフなら、過去の経験から判断できるかもしれません。
しかし、経験の浅いスタッフには、その「必要」の基準が分からないこともあります。
日本人同士であっても、実は同じです。

「ちゃんとやっておいて」
「いつものようにお願い」
「臨機応変に対応して」
「周りを見て動いて」

こうした言葉は便利ですが、人によって受け取り方が違います。
つまり、「察して」というコミュニケーションは、相手との間に共通の経験や価値観があるからこそ成立しやすいものなのかもしれません。

日本語が話せれば、問題ない?

外国人スタッフを採用するとき、「日本語が話せるかどうか」はもちろん重要なポイントの一つです。
しかし、日本語を理解できることと、仕事上の「前提」を理解できることは、同じではありません。
たとえば、
「お客様に気を配ってください」という言葉を理解できたとしても、
「どのような行動が“気を配る”ことなのか」まで共有されているとは限りません。

これは語学力だけの問題ではなく、文化や仕事に対する考え方、これまでの経験の違いなども関係します。
日本では「相手の気持ちを先回りする」「周囲の状況を見て行動する」といったことが評価される場面があります。
片や、明確な指示や役割分担を重視する環境で仕事をしてきた人にとっては、「察して動く」こと自体が分かりにくい場合もあります。
だからこそ、外国人スタッフと働くときには、「分かってもらう」だけではなく、「分かるように伝える」ことが大切になります。

「具体的に伝える」は、外国人スタッフのためだけではない

では、「分かるように伝える」とは、どういうことでしょうか。
たとえば、
「お客様をよく見てください」ではなく、
「お客様がロビーで周囲を見回していたら、何かお困りではないか声をかけてください」と伝える。

「忙しい部署を手伝って」ではなく、
「フロントが混雑していたら、チェックインをお待ちのお客様へのご案内をお願いします」と伝える。

このように、「何を見て」「どのタイミングで」「何をするのか」を具体的にするだけでも、受け取る側の迷いは少なくなります。
そして、これは外国人スタッフだけに必要なことではありません。
新人スタッフにも、異動してきたスタッフにも、日本人スタッフにも同じように役立ちます。

「分かる人には分かる」仕事の進め方から、「誰が聞いても分かる」仕事の進め方へ。

外国人スタッフと働くことは、これまで当たり前だと思っていた職場のコミュニケーションを見直す機会にもなるのではないでしょうか。

「伝える」ことは、マネージャー自身の思考も深める

「具体的に伝える」ということは、単にスタッフに分かりやすく説明することではありません。
実は、伝える側であるマネージャー自身が、自分の考えを整理することにもつながります。
例えば、「お客様に気を配ってください」と伝えるとき。

そもそも、どのような状態を「気を配る」と考えているのか。
どのタイミングで声をかけてほしいのか。
どこまでをスタッフ自身の判断に任せるのか。

こうしたことを具体的に言葉にしようとすると、マネージャー自身も「自分は何を求めているのか」を改めて考えることになります。
「伝えた」ことと「伝わった」ことは違います。
だからこそ、マネージャーに求められるのは、ただ指示を出すことではなく、
「相手が同じイメージを持てるところまで言葉にすること」なのかもしれません。
そして、そのために考え、言葉にすることは、スタッフへの指示を明確にするだけでなく、マネージャー自身の考える力を深めることにもつながっていくのではないでしょうか。

「察する力」から「伝える力」へ

ホテルの仕事では、相手の気持ちを察する力が大切です。

お客様が何を求めているのか。
今、どんなことに困っているのか。
どんなことをしたら、より快適に過ごしていただけるのか。

こうした感覚は、ホテルならではの「おもてなし」にもつながっています。
だからといって、スタッフ同士のコミュニケーションまで「察すること」に頼りすぎる必要はありません。
むしろ、お客様には細やかに気を配りながら、スタッフ同士では必要なことを具体的に伝える。
そんな使い分けも、これからのホテルには求められるのかもしれません。
そして、その役割を担うのがマネージャーです。
「なぜ、この仕事をするのか」
「どのような状態を目指しているのか」
「どこまでが本人の判断で、どこから相談するのか」
こうしたことを言葉にして共有する。
一見すると細かく感じるかもしれません。
しかし、共通の前提を持たない人たちが一緒に働く環境では、その「細かさ」がチームを支える土台になります。

多様なスタッフが働くホテルだからこそ

ホテルの現場では、さまざまな国籍やバックグラウンドを持つ人が働くことが、これまで以上に身近になっています。
そこで必要になるのは、「日本のやり方を理解してもらうこと」だけではありません。
これまで日本人同士の間で自然に共有されていた「普通」や「当たり前」を、一度言葉にしてみる。
そして、
「自分たちにとっては当たり前だけれど、相手にとっては当たり前ではないかもしれない」という視点を持つこと。それは、外国人スタッフとのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、日本人スタッフ同士の認識のズレを減らすことにもつながります。
多様な人が働くホテルでは、「察してくれる人」に頼るマネジメントから、「誰にでも分かるように伝える」マネジメントへ。
そんな変化が、少しずつ求められているのかもしれません。

まとめ

ホテルの仕事には、経験によって身につく「察する力」があります。
お客様の表情や仕草から気持ちを読み取り、一歩先のサービスを考える。
これは、ホテルで働く人にとって大切な力の一つです。
一方で、スタッフ同士のコミュニケーションまで「察して」に頼ってしまうと、認識のズレが生まれることがあります。
特に、文化や価値観、仕事の経験が異なるスタッフがともに働く環境では、「普通はこうする」「言わなくても分かる」という前提を共有することは簡単ではありません。
だからこそ、これからのホテルマネジメントには、「察する力」だけでなく「伝える力」も必要になっていく。
外国人スタッフの増加は、日本のホテルに新しい人材をもたらすだけではありません。
これまで当たり前だった働き方やコミュニケーションを見直す、ひとつのきっかけにもなっているのではないでしょうか。
「分かってくれない」と思ったとき。
もしかすると、まだ「分かるように伝えていない」のかもしれません。

ホテルの未来をつくるのが「人」なら、その人たちが力を発揮できる環境をつくるのも、また「人」なのです。

HOTELIER.Jobsからひとこと

HOTELIER.Jobsの転職サポートイメージ

ホテリエのキャリアに伴走する転職支援サイト「HOTELIER.Jobs」では、求人紹介だけでなく、キャリアの整理からサポートしています。

何となく転職を考え始めたけれど、どう動けばいいかわからない……

迷いがあるのは、真剣だから。その迷い、ひとりで抱えなくて大丈夫です。

どうぞお気軽にご相談ください。

サクッと転職相談はこちら